MOTOR SPORTS info

2022.10.31 SUPER GT

予選7位 決勝6位【GOODSMILE RACING & TeamUKYO】

2022 AUTOBACS SUPER GT Round7 FAV HOTEL AUTOPOLIS GT 300km RACE
オートポリス 2022/10/1~10/2

10月1〜2日、山に秋の訪れが感じられはじめた大分県のオートポリスで、2022 SUPER GT第7戦『FAV HOTEL AUTOPOLIS GT 300km RACE』が開催された。
9月17〜18日に開催された前戦「SUGO GT 300km RACE」は、予選日の深夜に谷口が虫垂炎を発症し、緊急手術のため仙台市立病院へ入院するというまさかのアクシデントが発生した為、決勝レースは片岡選手が単独で走行可能な2/3を走りきってリタイアするという結末に終わっていた。
その第6戦から2週間という短いインターバルの為、谷口の快復が間に合うのかが心配されていたが、今季チャンピオン争いをしているTGR GR86/BRZ Cupの十勝ラウンド参戦を断念して療養に努めた結果、無事にドクターからの出場許可を得て、晴れて九州に乗り込んでくることができた。
シリーズ全8戦中の第7戦となるこのレーウウィークでは、戦績に応じて搭載されるサクセスウエイト(=SW)が、競技規則によりポイント×1.5kgと前戦までの半分に軽減される。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのSW搭載量も36kgと軽くされていた。
ただし、今回もMercedes-AMG GT3に課された性能調整(BoP/バランス・オブ・パフォーマンス)は、BoP重量で40kgと前戦SUGOより5kg増となり、車両重量は1325kgでいつもどおりFIA GT3規定モデル最重量級となる。
なお、オートポリスは舗装の目が他のサーキットに比べて荒く、タイヤへの攻撃性が高いサーキットである。重量級の車両には不利な特徴と言える。
10月1日(土)【公式練習、公式予選】午前9時20分からの公式練習は、気温21度、路面温度28度というコンディション。片岡選手はライバル陣営の走行でレコードラインの状況が改善することを待ち、5分ほど遅れてコースイン。まずは持込タイヤの確認を行い計測5周目で1分45秒858を記録し、この時点で10番手タイムを記録する。
一度ピットへ戻り、もう1種類の持ち込みタイヤセットの確認を行う。その後、片岡選手は、前戦のSUGOで行ったセットアップの方向性の再確認と共に、オートポリスに合わせて車体の細かな調整を繰り返していく。
片岡選手が走行20周に達したところで、谷口へステアリングを渡す。マシンに乗り込んだ谷口は、コースに出るとマシンのチェックと同時に自身の身体のチェックも行っていた。谷口は、術後の傷の痛みを確認すると無線で「問題ない」とチームに報告し、片岡選手の仕上げたセットアップの方向性の確認を進める。しかし、3周目のラップに入ったところで、登り勾配となる最終セクター3の右50〜60Rで姿勢を乱しコースオフ。さすがのコントロールでどこにもダメージを負わずにピットへとマシンを戻したものの、拾った砂利の掻き出しなど清掃作業により、ピットで20分ほどを過ごすことになった。

この作業の時間を有効に使う為、予定したいたセット変更も同時に行った。車両バランスの確認の為、ふたたび片岡選手が乗り込み、GT300の占有走行まで走りきった。 片岡選手は占有走行で1分45秒256のベストタイムを刻み、 FCY(フルコースイエロー)テスト枠やサーキットサファリの各20分間でも引き続きステアリングを握り、翌日の決勝レースに向けて「谷口さんを温存する作戦だったので、いっぱい走ったな~」とひとこと。
「SUGOからいろいろとトライしていることがあり、前回である程度良い手応えを得たのが、今回ちょっと半歩戻って。『やっぱりそっちの方向だ』ということで、今回も練習走行からかなりクルマをイジり倒した。予選までにある程度は形になったから、そこは良かったなと思う」と語り、全体11番手で公式練習を終えた。
片岡選手はこの手応えをもとに、今回もポイントランキング順で2組に振り分けられたQ1のB組に挑んだ。午後3時18分のセッション開始からトラックイン。手前の午後3時時点で気温は25度ながら、真夏日予報も出た季節外れの日差しの影響で路面温度は42度まで上昇。
そんななか、走行13台中5番目でウォームアップを続けた4号車は、計測4周目で1分44秒061として5番手に飛び込んでくる。その後、7号車(Studie BMW M4)に先行を許したものの、見事に6番手でQ2進出を確定した。片岡選手は『帰って来たチームメイト』にバトンを繋いだ。
午後3時53分からのQ2の気温は変わらず、路面温度が37℃と少し下がったものの依然高いまま。谷口は、午前のわずかな周回数と初めて履くニュータイヤにも関わらず、この日最速の1分43秒987を出して7番グリッドを獲得してみせる。
これには片山右京監督も思わず「体のこともあるし、全然走っていないから。いやこれ『走れないだろう』と思っていた。『普通だったら走れないよな……』とそう思って見ていたら、バーっと出ていって、いきなりのあのタイム……もうスゴいなぁ、と。歳のせいもあって感動した(笑)」と、思わず涙する場面も。それを聞いた片岡選手からは「そのうち、 2時間ドラマのオープニングで泣けるようになりますよ」と茶化されていた。
翌日の決勝レースは前方グリッドに65号車(LEON PYRAMID AMG)や55号車(ARTA NSX GT3)、背後にはランキングトップを行く56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)や25号車(HOPPY Schatz GR Supra)と、強力なライバルに囲まれたポジションからのスタートとなった。

10月2日(日)【決勝】
天候:晴れ コース:ドライ
気温/路面温度 スタート前(13:28)25℃/43℃ 序盤(13:57)25℃/43℃ 中盤(14:28)25℃/42℃終盤(14:58)26℃/40℃ ゴール間近(15:29)26℃/38℃
「昨日の初日はちょっと乗ってみて。実際に『乗れるのか』だとか『痛いところはないのか』の確認はしたかった。その上でとにかく日曜まで、決勝まで体力を温存したいでも刺激的なことをすると『熱が出るよ』ってドクターに言われていて……。いわゆる”ジムに行って急にトレー。というのも、オレはこの2週間を養生していたから、ちょっとナーにめちゃめちゃしごかれた人”みたいな感じになっちゃうよ、って」
そう語っていた谷口の言葉どおり、決勝レースでは本来ならアクシデントによるセーフティカーの可能性や、給油時間やタイヤの摩耗度合いなども考慮し、スタートドライバーを務める片岡選手のスティントには”柔軟性”を持たせつつ、短めを基本とする戦略を採るのがセオリーとなっていた。しかし今回ばかりは、「いかに谷口の負荷を減らしつつ、良い戦績でゴールへ辿り着くか」が最優先事項となる。
午前12時10分からのウォームアップ走行時点で、気温26℃、路面温度39℃と前日同様引き続きの暑さが続く。そんな厳しい条件のなか、ステアリングを握った片岡選手はタイヤの摩耗度合いを中心にレースラップの推移を確認。1分48秒台を並べて、決勝スタートからのファーストスティントを「引っ張れる」手応えを得た。
そのウォームアップ走行でGT500車両がコースオフした影響で、決勝は当初予定より5分遅れとなる午後1時35分にスタートを迎えた。
そのオープニングラップ、スタート担当の片岡選手は中間加速で優位に立つ背後のGT-Rには前に出られたものの、3番グリッドスタートだった2号車(muta Racing GR86 GT)をパスして、スタート順位と同じ7番手でホームストレートに戻ってきた。
ここからGT500の先頭集団が追いついてくるまで、片岡選手は1分47秒台の安定したタイムでポイントリーダーの56号車を追走。12周目、56号車が55号車をかわし、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGの前方は55号車に入れ替わる。15周目、ターン1でコースオフした車両の回収の為、FCYが発動。そのリスタートのタイミングでのオーバーテイクを狙っていた片岡選手は、55号車を仕留め6番手に浮上する。
20周目、自己ベストの1分47秒377を記録しつつGT-Rを追う。レース距離3分の1を過ぎてドライバー交代のウインドウが開き、ライバル陣営でミニマムの戦略を採るチームが続々とピットへ入り始める。
これにより、21周目には5番手、24周目には4番手、26周目には2番手と徐々にポジションを上げ、27周目に前方の56号車がピットレーンに向かったことでトップの機会を手にする。「(タイヤのライフは)徐々に落ちつつも、フューエルエフェクトも合わさって、そんなにタイムを落とさずに走れた」という片岡選手は、30周を過ぎても時折1分47秒台を記録するペースで周回を重ね、レース距離の中間想定を超えた33周目に、オートポリスの名物とも言える、コースアウトサイド側にあるピットレーンへ飛び込んだ。
タイヤ4本交換のフルサービスとともに、いよいよコースインを果たした谷口は、暫定11番手で復帰。ここからチェッカーまでの残り約半分を走破するミッションに挑む。
「オレも正直、今の体力は3分の1くらいしかない感じ。だから決勝も『ちゃんとタイム並べられるかな』って心配だったんだけど」との言葉とは裏腹に、自身走り出しの3周目となる37周にはいきなり1分47秒012の好タイムを計時。その後も47秒台を連発し、周囲のルーティン作業もあり40周目には10番手、続くラップではポイント圏内の8番手に浮上する。
47周目、目の前にいた2号車が車両トラブルで最終セクターのコース脇にストップし、7番手へ進出。2号車の回収の為FCYが掲示され、谷口はリスタートに照準を合わせた谷口は、以前にも”コース全周サイド・バイ・サイド” の好バトルを演じた56号車のJ.P.デ・オリベイラ選手に襲い掛かり、ターン1からの前半区間でドッグファイトを展開。「でも、抜けない(笑)。クルマ換えっこしてくれたら抜く自信あるけど!」と、病み上がりを感じさせない闘争心溢れるドライブを観客に披露した。
51周目、2台前方を走行中だった55号車が右リヤをバーストさせスロー走行に。これで6番手に上がった4号車は、最後まで1分47秒台を並べながら60周目のフィニッシュラインへ。ランキングトップで69kgのSWを積むGT-Rのすぐ背後、6位でチェッカーを受けた。
これで獲得ポイントを29点とした4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのふたりだが、最終戦のモビリティリゾートもてぎで優勝し、仮に20点を加算したとしても、56号車の52点、61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)の49.5点を上回ることは出来ず、ここで2022年の逆転タイトル獲得に向けた可能性は絶たれてしまった。
しかし何よりも、復帰戦でシングルフィニッシュを達成した谷口が、11月初旬には完全回復を果たし、もてぎを無類の得意コースとする片岡選手とともに「シーズン最後の大暴れ」を演じてくれるのを楽しみにしたい。

関連記事