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2023.04.28 SUPER GT

予選5位 決勝9位【谷口信輝選手 GOODSMILE RACING】

2023 SUPER GT Round 1
2023年 4 月 14 日( 金 )~ 4 月 16 日( 日 )岡山国際サーキット

GT300クラス3冠を誇る谷口信輝と片岡龍也選手、そしてGOODSMILE RACING & TeamUKYOが、4月の岡山国際サーキットで2023年開幕の日を迎えた。

今季のGT300クラスには12車種27台がエントリーされており、タイヤメーカーは、ヨコハマタイヤ、ブリヂストン、ダンロップ、ミシュランの4ブランドが参戦する。
様々な車種と、上級カテゴリーのレースシリーズでは今や世界的にも珍しくなった複数のタイヤメーカーによる争いはSUPER GT GT300クラスの最大の魅力だ。

GOODSMILE RACING & TeamUKYOの体制は、安藝貴範代表、片山右京監督、谷口信輝、片岡龍也選手のフロントメンバーに、マシンはMercedes-AMG GT3、タイヤはヨコハマタイヤ、そしてメンテナンスガレージにRSファインと、2012年から続くお馴染みのパッケージだ。

今季の行方に大きな影響を与える可能性のあるポイントとして、昨年11月のシリーズ最終戦の際にプロモーターのGTアソシエイション(GTA)から発表された『スーパーGTグリーンプロジェクト2030』がある。このプロジェクトはSUPER GT全体での二酸化炭素排出量を50%削減する事を目標として様々な取り組みを行っていくものだ。
その1つとして、各種のレギュレーション変更がおこなわれている。

まず、持ち込みタイヤセット数が『ドライタイヤ5セット』、『ウェットタイヤは6セット』と、昨季より1セットずつ削減された。また、燃料は今季よりドイツのハルターマン・カーレス社製カーボンニュートラルフューエル(CNF)「GTAR100」の使用が義務付けられた。ただし、GT300クラスでは「エンジンの適合に向けた対応」を行う猶予期間として、第1戦と第2戦での使用は見送られた。これらの変更により、各チームは戦略やマシンのセッティングの見直しを迫られる事になる。

そして様々な車種が参戦するSUPER GTのようなレースでは各車両のパフォーマンスを均衡させる必要がある為、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)と呼ばれる性能調整が行われる。
この開幕戦でMercedes-AMG GT-3に課せられたBoPは、エアリストリクター(エンジンへの吸気量を制限して出力を抑制する部品)が、自然吸気(NA)エンジン車のなかで最も小さい『34.5mm径×2』で昨年開幕戦と同様、車体重量1285kgに加えられるBoP重量は+35kgで、昨年の+45kgから10kg軽減された。

4月15日(土)【公式練習・公式予選】

天候:Q1曇り/Q2曇りコース:ウエット

気温/路面温度GT300 Q1開始時14℃/15℃ GT300 Q2開始時14℃/15℃ 終了15℃/16℃


ドライコンディションが期待されていた土曜日のプラクティスセッションだったが、週末に向けて予報は悪化の一途をたどり、当日は朝から雨。午前9時10分のセッション開始を前にWET宣言が出されていた。気温13度、路面温度14度のコンディションのもと、走り出しを担当した片岡選手がウエットタイヤの感触を確かめる。

ピットレーン・オープンと共にコースに入った片岡選手は、水煙を上げながら計測12周目に1分39秒776を記録するとすぐにピットへと戻り、異なるスペックのタイヤでコースへ向かった。しかし、その直後モスSでGT500車両が大きくクラッシュしたことにより、赤旗が掲示されセッション中断となる。



約30分後の10時10分に走行が再開される。
再びコースに出た片岡選手は、ここから1分41~42秒台でラップを重ねていったが、強い雨が降り続いており「コース上の水量が多過ぎるかも」という片岡選手の言葉どおり、GT300クラス占有走行枠の10時35分を目前にして、「雨量の増加により」再びの赤旗が掲出される。その後再開されることなくそのままセッション終了となった。当初のスケジュールでは占有走行枠で谷口がステアリングを握る予定だったが、赤旗終了したことで公式練習では1周も走ることが出来なかった。
時間を追うごとに雨量が増えた為、序盤に記録した1分39秒776がベストタイムとなり11番手で公式練習を終えた。

公式練習が赤旗終了した事を受け、直後に10分間予定されていたFCY(フルコースイエロー)テスト枠は急遽『フリー走行』に変更された。
谷口はここで初めてコースインするも雨量が多過ぎたため2周でピットへ戻ることに。コンディションやタイヤの確認がほぼ出来ず、午後の予選に向け不安要素を残す状況となってしまった。

午後2時、気温、路温とも午前から大きな変化がなく、降り続く雨によりコースはヘビーウェットなコンディション。予選Q1は前年度ランキング順にA組とB組に振り分けられ、4号車グッドスマイル初音ミクAMGはB組となる。通常でれば予選Q1は10分間で行われるが、タイヤのグリップ発動に必要な時間を考慮した措置として、走行枠が15分
へと拡大されていた。しかしそれにも関わらず、14時ちょうどにスタートしたQ1A組は、アタックを済ませていないマシンを多く残したまま、雨量の多さを理由に午後2時9分に赤旗終了が宣言された。

Q1B組は雨が弱まるのを待って予定より15分遅れて午後2時33分に開始された。Q1を担当した谷口はセッション開始直後にピットをあとにした。
「こんなコンディションでは、結局はそのときのコースにある雨や水の量、そことタイヤがマッチするかしないかが全て。走るところ(雨でも路面のグリップする部分)は、どうせアタックするまでに探さないといけないのだから、練習できてなくても問題ない」と、さすがの天才肌発言。
ウエットタイヤのグリップを掌握していく。

その谷口は有言実行のドライビングで、タイム更新合戦と化した15分間で常に自己ベストを更新しトップ5圏内を刻み続け、計測8周目に1分40秒134をマーク。
コントロールライン通過時点で4番手、その後ライバルのタイムアップで順位を落とすも、6番手でQ1を通過しQ2担当の片岡選手へとバトンを繋いだ。

予選Q2は片岡選手が担当。
セッション開始と共にコースに飛び出しウォームアップを開始すると、計測4周目よりタイムアタックに入った。1分39秒台から徐々にタイムを詰めて1分37秒台へ。タイム更新が鈍った計測8周目に意図的にペースを落としてタイヤをクールダウンすると、タイヤが持つ最後のグリップを搾り取るべく渾身のアタック、1分37秒070の自己ベストを叩き出して5番手でチェッカーフラッグを受けた。
今季最初のレースとなる翌日の決勝は5番グリッドから挑むこととなった。

ポールポジションはブリジストンタイヤを装着する65号車Mercedes-AMG GT3。
同じ車種にも関わらず約1秒の差を付けられてしまい、レインタイヤの性能差の大きさを見せつけられた。

4月16日(日)【決勝】

天候:晴れ/曇り/雨コース:ドライ/ウエット

気温/路面温度スタート前(13:15):19℃/30℃ 序盤(13:40):18℃/23℃ 中盤(14:20):16℃/24℃

終盤(16:00):13℃/16℃ ゴール時(16:25):11℃/14℃


土曜の荒天とは打って変わり、日曜は朝から青空が広がった。
まさに"晴れの国おかやま"という穏やかな空気の中、イベント広場では各種の物販テントやステージイベントに人だかりができ、ピットぅオークでも各チームがギブアウェイの配布やサイン会などを催し、ごく一部に制限は残るものの、コロナ禍以前のようなにぎわいがサーキットに戻ってきた。

しかしスタート進行が始まる頃、快晴だったはずの空にみるみる鉛色の雲が広がり始めた。
そしていよいよ決勝レースに向けてマシンが動き始めようとした1時30分、ポツポツと雨粒が落ちはじめた。天気予報でも決勝中の降雨は予想されていたが、そのタイミングはレース後半だと思われていた為、予想よりも早まった降雨にレース直後からパドックは慌ただしさを見せる。

序盤の路面がドライな間は、片岡選手は5番手を堅持し、背後で目まぐるしく順位を入れ替える31号車(aprLC500h GT)、52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)ら追走集団を抑えつつ、前を行く88号車(JLOC ランボルギーニGT3)と7号車(Studie BMW M4)の隙を伺う。
しかし、いよいよ雨脚が強まって来た14周目、片岡選手の2台前を走行していた7号車が突如、異変を見せる。

「突然、強烈にアーリーブレーキになって。それで僕も含め後ろが混乱し出した。その隙にまずは88号車を抜き、今度は僕が7号車に仕掛けた」と、状況を振り返った片岡選手。

路面はほぼウエット。
周囲のライバルもスリックタイヤで粘るなか、ほとんどレーシングスピードを維持できないスロー走行のような状態で、ダブルヘアピンの2個目で勝負に出る。

「比較的速いスピードからのブレーキが何十mも早いんじゃないか、っていうぐらいブレーキが早かった。それでブロックもされて危なかったので、ダブルヘアピンの遅いところなら横に並べるだろう」とインを刺した瞬間、相手もレイトブレーキングで応じてくる。

「それでボディサイドでなく、後方に当たる結果になった。これで『ドライブスルーは喰らうだろうな』と。濡れてるスリックだから、その状況もめっちゃスローモーション。一瞬、さらに押して『戻そうか』とも考えましたが……。取り敢えずその後も『行くしかない』と」、気持ちを切り替えホームストレートへ戻ってくる。この接触の横を一度は抜いた88号車に抜き返されて順位は4居となっていたが、2番手を走行していた2号車(muta Racing GR86 GT)がウェットタイヤに交換する為にピットに入った事で3番手となる。

時を同じくして6号車(DOBOT Audi R8 LMS)が1コーナーでコースオフ、グラベルに捕まりFCYが掲示されピットレーンがクローズされる。さらにバックストレートでは11号車のタイヤが脱落するなど、立て続けのアクシデント発生ですぐさまセーフティカー(SC)出動となった。



この直前に56号車に抜き去られていたが、一方で88号車がヘアピンでコースオフして順位を戻す。既にドライタイヤでの走行は限界を迎えていた。

「本当ならあの周で入れていたら……とも思うけど、無線で(ピットインの)連絡が入ったときちょうどピットレーン入り口のすぐ脇だった」というタイミングの悪さもあり、FCY導入でピットレーンクローズされた事で、スリックタイヤのまま先導走行を強いられることになってしまった。ピットレーンクローズ解除となった18周目にようやくタイヤ交換に飛び込むが、ここでも不運が連鎖する。

「(FCYの)直前に56号車に前に出られていて、それが前の隊列から……もう300mとか400mとか離れてしまって。これでピットに入るタイミングが何十秒も遅れ、さらにそのタイミングもあってか、出口の信号が目の前で赤に……。アレで合計1分くらいは損したんじゃないかなと」

ピットレーン出口の信号が青になると、ウェットタイヤに交換した片岡選手は11番手でコースへ復帰する。
22周目に8番手までポジションを回復。その後も1分38秒台のペースで周回を重ねる。しかしここで7号車との接触に対して「ドライスルーペナルティ」が宣告され、27周目にピットレーンを通過。15番手で車列に復帰すると、96号車(K-tunes RC F GT3)、244号車(HACHI-ICHI GR Supra GT)をオーバーテイクして、37周目のピットインで11番手まで回復して谷口へバトンタッチする。

徐々にドライアップする路面に合わせ、この週末で初のスリックタイヤを履いた谷口は、皮むきの済んだグリップ発動の早いセットを存分に活用して追い上げを開始する。
右京監督をして「予選も含め、いつも大したもんだわと思うよ、ほんと」と言わしめる驚速のアウトラップを披露し、アンダーカットも成功させ14番手のコース復帰からみるみるポジションを上げていく。しかしこの日の混沌はこれだけで終わらなかった。44周目にヘアピンで61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)がコースオフしてFCYが出されると、解除後の48周目には9号車(PACIFIC ぶいすぽっNAC AMG)と88号車がモスSからアトウッド手前で接触し、ここで再びのSC出動となる。

FCY中、「前にいる56号車のスピードリミッターが遅く、詰まった」という状況もあり、FCYが終了してリスタートした直後にGT-Rをパスして8番手を走行していた谷口だが、51周目に雨が激しさを増したことでこの日2回目の赤旗掲出となってしまう。

スリックタイヤ装着のままホームストレート上に停車した4号車は、52周目のSC先導リスタートのなかでピットレーンオープンと共にすぐにピットへ向かい、ここでウエットに履き替える選択をする。しかし大混雑と化したレーンではロスタイムは避けられず。リリース以降、ピット出口までのファストレーンも「出てくるクルマの大渋滞でごった返して、10番手にダウンしてしまう。

しかしSC先導中に8番手だった2号車(muta Racing GR86 GT)がタイヤ脱落のトラブルで停止したことで9番手にポジションを上げると、59周目に再度の赤旗中断に。レース最大延長時間の午後16時30分が迫る16時20分になんとかSC先導でのリスタートが試みられたが、雨は全く収まらず、その5分後には三度赤旗でレースが止まる。

この段階で「決勝レースは赤旗で終了」と宣言され、結果的に入賞圏内の9位フィニッシュ。混戦の強さを持ち味とするGSRは、ドライブスルーペナルティなどに翻弄されつつも、2ポイントながら、2年連続で開幕戦のポイントを持ち帰る結果となった。

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