MOTOR SPORTS info

2023.11.16 DRIFT

チームにとって過去1番の試練 総合8位 【下田紗弥加】

<公式練習> 10月27日(金)
走行枠3ヒート
朝一、コースウォークを行い、3つあるゾーン(マシンが通らないと減点になる箇所)の場所や、路面状態の確認を行います。
2本目の練習走行からDOSSによる得点が提示されるので、1本目の走行はファイナルギアの決定と、コースの確認に集中します。1ヒートの走行時間は30分ありますが、1周あたり約3分位掛かるうえに、走行順を待つ時間を含めると5~6分。 タイヤの消耗が激しいこのコースでは3周ほどしかタイヤがもたない為、ピットに入ってタイヤ交換を行うと、今度は走行時間に間に合わない可能性があります。 つまり1ヒート、実質3周と割り切り組み立てを行います。
・ <1本目>1本目を走行し、ファイナルは3.7に決定します。
・ <2本目>この走行から得点を意識し、様々なラインを試しながら、どの走らせ方が高得点になるか違った走らせ方を試みますが、2周目を走った直後にドライバーから「水温がいきなり120度まで上がった!」と連絡が入ります。 即座にマシンをコース脇に停め、マーシャルカーに引っ張られてピットに戻ってきます。
スペアエンジンは持って来ておらず、翌日走らせるためには、現地でスペアになるエンジンを見つけるか、東京にある昨年まで使用していたエンジンを、戦闘力は落ちるものの持って来てもらうか、判断しなければなりません。
東京組にはいつでも出発出来るように準備をしてもらいつつ、現場で可能な限り他のチームに声を掛け、探してもらいます。(話は変わりますが、通常のモータースポーツでは、敵チームにスペアパーツを渡す事など考えられない事のようですが、ドリフトは、全員で観客を盛り上げようとする意識が高く、快く協力してくれるチームが多いのも特徴だと思います。)
その結果、今使用しているエンジンより、さらにスペックの高いエンジンを譲ってくれるチームが見つかり、メカニックはエンジン載せ替えの準備を始めます。
それと同時に2周しか走れなかったものの、2本目のDOSS得点が発表されたので、分析を開始します。
分析をして分かったことは、ストレートスピードを含め、得意であるコーナーリング中の車速も伸びていません。 エンジンの問題はあったにせよ、旋回車速が遅い原因は他に問題があるありそうです。
18時、エンジン載せ替えを開始。
通常ですと載せ替えの時間が5~6時間。細かい補器類の脱着が2~3時間なので、何とか明日のチェックランの8時50分には間に合いそうですが、エンジンを製作したショップが違うため、細かい箇所で、足りない部品や、要加工の箇所が出てくる場合もあります。
また、オートポリスは山頂にあるため、朝晩は非常に冷え込むため、暖房器具の無いピットは過酷な状況が予想されますが、メカニックは必死に作業に行います。同時に、足回りの点検をしたところ、LSDのイニシャルトルクが低いことも発覚し、スペアの同じ3.7ファイナルのデフに載せ替えます。
エンジンは、やはり補器類の取り付けでマイナートラブルブルもありましたが、メカニック達は様々なアイディアを出しながら、ひとつひとつの部品を丁寧にミス無く組み上げていきます。

<Rd.7> 10月28日 (土)
前夜から14時間以上休みなく作業をしていたメカニックの必死の作業にも関わらず、時間は刻一刻過ぎてゆき、8時50分からのチェックランに間に合わせる事は出来ませんでした。
しかしメカニックは、少しでもドライバーを走らせたい気持ちで、肉体的には限界なカラダにムチを打ち作業を進めます。
本番15分前、マシンが続々とピットレーンに並び始めます。本日のRd.7の出走をあきらめ掛けたその時、作業が終了。「ドライバーマシンに乗り込んで!」と声が響きます。いつでも乗り込めるように準備をしていた紗弥加は即座に用意をし、マシンをピットレーンに並べます。 あと1分遅ければ失格でしたがギリギリ間に合います。
しかし、完成したばかりのマシンで、ミスが無い様に最終チェックも行いましたが、何が起こるか分からない状態で、1周のウォームアップランに入りましたが、ここでまさかの白煙が噴き出します。 オフィシャルが確認したところ、下回りからオイル漏れがあり、レギュレーションでピットに戻る事は許されず、ここで無念のリタイヤとなりました。ピットに戻り、下回りを確認すると、ミッションのオイルホースのジョイントの締め付けが若干弱く、そこからのオイル漏れと言う事が判明。 その後、メカニックは休む間もなく、マシンチェックを入念に行いました。
その後、観客の同乗走行で2周走らせて実走チェックが行い、翌日のRd.8に気持ち切り替えました。
またファンと交流が出来るピットウォークでは、紗弥加は九州でも大人気で、握手やサインの長蛇の列が出来ました。 リタイヤした悔しさも見せず、笑顔でファンの一人一人と丁寧に交流を深めておりました。

<Rd.8> 10月29日 (日)
朝のチェックランは4周走る事が出来、走行後各部のチェックを行います。
DOSSの点数を見ると97,1点。 この点数では、ベスト16に入る事は難しそうです。
データーを見ると3セクターの振り返しの点数が伸びておらず、ラインなど改善点を見つけてゆきます。 金曜日から10周も走行出来ていない状況でも、何とかドライバーと対策を考えてゆきます。
<単走>
1本目・・走行の順番は、4クラスある内の(1クラス10台)、3クラス目の7番目。進入からのラインを変え、振り返しのスピードアップを狙います。
得点は97.4点
その時点で10番手ですが、走行していない選手は13名ほどの残っているうえに、同クラスでも2本目の走行も残っています。まだまだ安心出来ません。
2本目・・さらなる高得点を狙って、スピードアップとアングルを深くつけて走りますが、3つめのゾーンでわずかにコースアウト判定でマイナス2点を引かれ96.4点。コースアウトを引かれなければ98.4点と、今後に期待出来る得点ではありますが、まずは追走に残らなければ意味がありません。
その後の選手も高得点を出し、結果16位(繰り上げ15位)でギリギリではありますが、通過しました。
しかし、昨日ベスト16に進出していた選手の内、優勝者を含む半数8名が、この日の追走に残れないという実態から、D1GPで常に16位に入る難しさが伝わってまいります。

<追走1回戦・ベスト16>
単走から、追走までの間に、デフのイニシャルトルクをさらに上げ、コーナーリングスピードの向上を狙います。 しかし、イニシャルトルクを上げると言う事は、前に進む力が大きくなり、ドリフト状態に持って行くことが、多少難しくなります。
1回戦目の相手は、単走2位通過、大ベテランの日比野 哲也選手となるので、リスクは承知で攻めのセッティングを施します。 日比野選手は、同じチームで戦っていたこともあり、良く知っているドライバーですが、とにかく上手でスキのない選手となる為、作戦も重要になります。
戦い方としては、後追いスタートなので、当然ストレートで離されないことはもとより、進入に関しては、日比野選手は手前から振り出すので、その振り出しポイントに騙されず、自分の位置で振り出すこと。振り返し後、旋回車速はこちらのマシンに分があるので、追いかけモードになると近づきすぎると行き場が無くなる可能性がある為、ここでもしっかりと自分の走りに徹すること。
先行に関しては、後ろを気にせずDOSS得点98点以上目指す事。この2点を注意し追走に向かいました。

実際、後追いでは、ストレートで付いて行けず、その距離を収支詰めることは出来ませんでしたが、先行時は落ち着いて、狙い通り98点のDOSS点をたたき出し、その走りに翻弄されたのか、名手日比野哲也選手でも、ドリフトが戻るという大きなミスを犯して、見事下田紗弥加がベスト8に駒を進めました。

<追走2回戦・ベスト8>
単走2位の日比野選手を破ったことで、ここからは先行スタートとなります。相手は、若手でも勢いのある秋葉選手となり、この選手は1回戦目に後追いポイントでフルマーク(常に接近して、接近の加点ではパーフェクトの15ポイント)を取り、勝ち上がっている為、勢いのある手強い選手となります。
先行時は、キッチリと走り切り、DOSS得点は98点には届かない97点でしたが、後追いポイントを11ポイント取られてしまいます。 この時点で97:103(秋葉選手はDOSS点で92点の為)
勝負は後追いで決まります。この時点で、少しでもリアタイヤのグリップを上げるために出来ることは、リアタイヤの内圧を通常1.2キロから0.7キロまで落とすこと位になります。しかし、ストレートで若干離された距離を縮める為に、少し角度を浅くした瞬間ドリフトが戻り、勝敗が決まりました。
最終結果は、ベスト8で敗退し、総合8位と言う結果でした。

関連記事