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2024.05.31 SUPER GT

惜しくも表彰台を逃す4位と【GOODSMILE RACING】

2024年のSUPER GT第2戦が初のフォーマットとなる3時間タイムレースとして、ゴールデンウィークの富士スピードウェイで開催された。
2022年と2023年の第2戦富士では450kmの耐久フォーマットが採用されていたが、今大会はSUPER GT史上初の試みとなる『時間レース』とされた。ピット回数は決勝レース中に"給油を伴う2回のピットイン"が義務とされ、タイヤの持込本数はドライタイヤ6セット、ウエットタイヤは7セットとなった。
今回のMercedes-AMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)は、車両のBoP重量が35kg、さらに今季より安全性向上策として追加された重量が開幕戦に引き続き39kgで、合計は1359kgとなった。加えて4号車グッドスマイル 初音ミク AMGには、開幕戦岡山で獲得した2ポイント×2kgのサクセスウエイト(SW)4kgが搭載される。
またエアリストリクターは従来の富士戦では36mm×2を装着とされていたが、今大会では35mm×2へとサイズダウンされてしまった。他のサーキットに比べて大きなリストリクターを使用できることで、チームにとって富士は比較的好成績を残しやすいサーキットだったのだが、これは痛い変更だ。
5月3日(金・祝)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ コース:ドライ 気温/路面温度:Q1開始前24℃/35℃ Q2途中22℃/34℃

セッション開始と共に片岡選手がコースイン。6周目に1分36秒853を記録し、計測時点で3番手とした。ここからピットでの作業を繰り返してセットアップの作業を進めつつ持ち込んだ2種類のドライタイヤの感触を確認した。片岡選手は21周を走ったところでピットへと戻り、谷口へと替わった。
谷口はバランスの微調整とロングランの確認を行った。1分38秒台を並べたのちにクールダウンを挟み、計測9周目(4号車・計30周目)には1分37秒855の自己ベストをマーク。最終10分間のクラス専有走行を前に、ふたたび片岡選手にシートを譲った。
公式練習の時間帯を通じて7番手を守ってきた4号車だが、このクラス占有走行中の予選シミュレーションでは1分37秒073と自己ベスト更新はならず。セッション終了間際に87号車(METALIVE S Lamborghini GT3)のタイム更新により、序盤に記録していたタイムで総合8番手となった。
午前10時55分からのFCYテストでは再び谷口がステアリングを握り、計9周を走破し12番手、同11時20分からGSRバスの2号車を縫うように走行したサーキットサファリ枠でも10周で7番手で午前中の走行を終えた。
今シーズンから始まった新しいフォーマットの予選は、チームランキングに基づいて振り分けられたA組とB組で予選Q1を争ったのち、各組上位8台を集めた"アッパー16"とそれ以外の"ロワー17"に分かれてQ2を実施する。その上で、両ドライバーのタイム合算でグリッドが決まる。予選1位のドライバーには3ポイント、2位2ポイント、 3位1ポイントと、予選トップ3チームにポイントが付与されるのも新たなルールだ。

またQ1A組B組のどちらが先攻で走行するかは、前戦優勝チームによるくじ引きで決める。以前の予選Q1は各組の上位8台に入る事だけが目的だったが、新ルールでは両ドライバーのタイム合算値で順位が決まる為、Q1でも順位だけでなく少しでも速いタイムを記録する事が重要になる。つまり先攻組車両のタイムアタックによってコースにラバーが載る後攻の方が有利ということになるのだ。
更にQ1で装着する『マーキングタイヤ』は、Q2と翌日の決勝スタートでも使用しなくてはならないというルールも追加されている為、各チームとも決勝スタートまで見据えたタイヤマネジメントを考慮しなくてはならない。
今回4号車が振り分けられたQ1A組は、開幕戦に続き後攻となった。最初のタイムアタックを務めるのは片岡選手だ。
午後2時43分、直前のB組開始時点(午後2時25分)で気温は24℃、路面温度は38℃にまで上昇するなか、片岡選手はセッション開始と同時に7台目でコースインし、じっくりと熱入れを進めていった。
片岡選手は丁寧にタイヤの熱入れを終えたのち、計測5周目のアタックラップで1分36秒605の5番手タイムを記録した。その後更にタイムアップを目指してアタックをつづけると、次の周で1分36秒156を記録、Q1トップタイムに踊り出た。
午後3時36分、Q2"アッパー16(Gr.1)"がスタート、谷口はコースインした後速やかに隊列の4台目でクリーンなポジションを得ると、Q1で使用されたユーズドタイヤを丁寧に温め直してグリップ再発動を促す。
最初のアタックは1分37秒179の11番手、この時点の合算タイムで6番手と、事前にチームが予想していた3列目グリッドの位置につける。「これがこのタイヤセットと路面状況の限界か……」と思われた最終アタック、得意のセクター3もまとめた谷口は1分36秒476とセッション5番手タイムを記録して、合算タイムで88号車(JLOC Lamborghini GT3)に次ぐ総合2番手へとジャンプアップしてセッションを終えた。翌日の"3時間レース"は視界良好のフロントロウ2番手発進だ。

5月4日(土)【決勝】
天候:晴れ コース:ドライ 気温/路面温度:スタート時(13:30)24℃/40℃ 中盤(14:30)24℃/42℃
前日の予選でトップ3になったことで、谷口は午前9時からの予選トップ3ドライバートークショーへ2年連続で出演となった。登壇した谷口は、トークでもライバルを牽制しつつ、詰めかけた大勢のファンの前で午後の勝負に向けて意気込みを語った。
正午からのウォームアップ走行20分間はいつもどおり片岡選手が走行を担当し、前日同様に1分38~39秒台のペースを確認。最後はドライバー交代の練習も実施して"3時間"レースへの準備を終えた。
今回の第2戦はレース距離と2回のピット作業が義務づけられている為、第3ドライバーの登録も認められているが、GSRは追加ドライバーは登録せず、いつも通り谷口、片岡選手にレースを託した。
パレードラップ、フォーメーションラップを終え、午後1時30分、気温23℃、路面温度41℃のなか決勝レースがスタートした。4号車の前方にはポールシッターの88号車のみ。これを追い抜こうとターン1へ飛び込んだ4号車だったが、今回のラウンドから"アップデートパーツ"を投入して絶好調の88号車を差し切る事はできず。オープニングラップ以降2番手のまま、首位を追走する時間が続いていく。
しかし88号車に1周ごとにジリジリとギャップを広げられていき、GT500クラスの先頭集団が追いついてきた10周を前に、首位とのギャップは7.154秒まで拡大。片岡選手は想定したレースペースを精度高く並べる走りを続けるも、背後には開幕戦ウイナーの2号車(muta Racing GR86 GT)と、同じ車種のライバルでもある65号車
(LEON PYRAMID AMG)のブリヂストン陣営2台が迫っていた。
15周目にはダンロップコーナーのイン側で6号車(UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI)が、さらにターン2で11号車(GAINER TANAX Z)がコースサイドでストップしたため、この日最初にして唯一のFCY(フルコースイエロー)が発動。コース上は全車一律80km/h上限の走行となった。
直後の16周目にはレースは再開されたが、このFCYがクールダウンとなった片岡選手は引き続き1分38秒台を並べてポジションを堅守していった。しかしトップの88号車はジリジリと後続を引き離していく。
88号車までのギャップが14.930秒まで広がった29周目、4号車は最初のルーティン作業に向かった。給油とタイヤ4本交換のフルサービスを受け、そのまま片岡選手の"ダブルスティント"でコースへと復帰した。
予選Q1以来のニュータイヤを得て15番手からレースを再開した4号車だったが、レース開始30分の時点で真っ先にピット作業を終えていた31号車(apr LC500h GT)が、ブリヂストン得意の"タイヤ無交換作戦"でトラックポジションをゲイン。ここで4号車の前方に立ち塞がった。それでも1分38秒台を連発した片岡選手は、ハイブリッド機構搭載のトップスピードが武器となるGTA300車両の31号車に果敢に接近戦を挑み続け、39周目には1分38秒474の自己ベストも更新して、少しずつギャップを詰めていった。
ライバルの1回目作業が一巡した46周目には見た目上も3番手に返り咲き、戦略が異なる前方の31号車が2回目のピットへ向かう60周目まで、ほぼタイムドロップのない高精度なドライビングで重圧を掛け続けた。
可能であればここからさらなるプッシュを続けたかった4号車だが、やはりタイヤグリップの面でこれ以上のロスを避けるべく、63周目にドライバー交代を含めた2回目のピット作業へ。ここで新品のセットに履き替え、谷口をモニター画面上50.6秒の作業静止時間で最終スティントへ送り出した。
このピットインで31号車を出し抜くことができたものの、4号車の2台背後から同時ピットで来た52号車(Green Brave GR Supra GT)に「ケアしていたんですが(安藝貴範代表)」と、やはり"タイヤ無交換作戦"によりピットロード内で先行される展開に。
その後、71周目には65号車がピットアウトした際には前に出られたが、タイヤ交換直後でタイヤが発動しきる前にコース上で仕留めて実質3番手のポジションを守った。
谷口は72周目に1分38秒110の自己ベストを叩き出し懸命な追走を続けていった。2番手を走行する52号車はタイヤ無交換、グリップダウンが訪れることを祈りつつ周回を重ねた。全車すべてのルーティンが完了した84周目に3番手へと回復。2番手とのギャップも周回を重ねるごとに削り取っては来たものの、残り30分を切った段階で新たな敵が出現した。
52号車まで0.731秒差まで詰めた92周目、背後から猛追してきた56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)に勝負を挑まれると、セクター3で運悪くGT500の隊列も重なり4番手に後退。登り勾配では中間域の加速に優れるツインターボのGT-Rが相手では劣勢を強いられ、ここでも吸気リストリクターが絞られた影響を受けることに。
ゴールの3時間が経過し、レースは88号車のポールトゥウィンで幕を閉じた。2位は56号車、3位は52号車で、4号車は首位と同一周回の108周でチェッカーを受けるも、惜しくも表彰台を逃す4位という結末となった。

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