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2022.08.31 SUPER GT

数年の中でも最大のチャンス予選3位 決勝13位【GOODSMILE RACING & TeamUKYO】

2022 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJIMAKI GROUP FUJI GT 100Lap RACE
8月6日~8月7日 富士スピードウェイ

第4戦富士スピードウェイは、5月末に行われた第3戦鈴鹿から約2カ月のインターバルを経て迎えた。
今シーズン第2戦の「FUJI GT 450KM RACE」は、SUPER GTとして初めて450kmというレース距離が設定されたレースだったが、GT500クラスの大クラッシュ発生による赤旗中断から最大延長時間到達によるハーフポイントでのレース成立という不完全燃焼の1戦となっていた。その”リベンジ”とも言えた今大会は、「FUJI GT 100 LAP RACE」と第2戦とは異なる名称を与えられたものの、レース距離450km、給油義務2回と、第2戦と変わらぬフォーマットのレースである。
GOODSMILE RACING & TeamUKYOは、長距離戦に強いMercedes-AMG GT3の特性と、高速サーキット用のBoPで設定され他サーキットよりも大きな36mmリストリクターを装着できる今大会で大量得点を狙っていた。
尚、Mercedes-AMG GT3のBoP重量は、前回の富士(第2戦)よりわずかに5kg軽減された50kgとなったものの、車両総重量1335kgはいつも通りFIA GT3規定モデル最重量であった。これに4号車グッドスマイル初音ミクAMGはサクセスウエイト(=SW)の12kgが課されていた。
【8月6日(土)】公式練習、公式予選

土曜日は早朝からサーキット全体に濃霧が立ち込めていた。朝一番から始まるサポートレースのFIA-F4予選は濃霧による視界不良でキャンセルとなっていたが、午前9時からのSUPER GT公式練習が始まるころには霧も晴れていき、定刻どおりに始まった。霧は晴れたものの気温22度、路面温度26度と、6月以降続いた灼熱の猛暑日から一転して予想外の低温のコンディションとなった。谷口信輝、片岡龍也選手ともに、まずは”想定外の低路温 “で「持ち込みタイヤがどう反応するか」を焦点に練習走行へと臨んだ。
走行開始時刻になってもところどころにウエットパッチが残っており、コースオープンを前にWET宣言が出されていたこともあって、チームは走り出し担当の片岡選手をガレージ内で待機させ、ライバル勢の周回による路面状況の改善を待った。
セッション開始35分を過ぎ、路面が充分に改善したところで片岡選手と4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、 GT300クラス全26台のうち、25番目にコースインした。そして最初のタイヤセットで計測4周目に1分38秒040をマーク、いきなりタイムボードの最上位に踊り出た。
その後、ライバルのタイム更新で3番手に落ちたものの、次のタイヤセットでは1分37秒311を叩き再びトップを奪還する。続く11周目には1分37秒056までタイムを伸ばして更にチームを驚かせると、わずか13周の走行で谷口にシートを引き継いだ。
ロングランの確認を行った谷口も1分38秒台前半の好タイムを連発。「何か僕らのBoPが緩んだわけでもね』『持ち込みタイヤ、外しちゃったね』っていうことになるハズだったのに、なぜか調子が良くて、うれしい誤算で」と、狐につままれたような感想だった。ないし、想定した8月上旬のコンディションとは違い……本当に夏とは思えない温度で。本来だったら『路気温外しましたね』『持ち込みタイヤ、外しちゃったね』っていうことになるハズだったのに、なぜか調子が良くて、うれしい誤算で」と、狐につままれたような感想だった。

午前10時25分からのGT300クラスの専有走行枠でも1分38秒161、38秒275と並べ谷口はピットへと戻る。残り5分は再び片岡選手が乗り込み、ロングランセットの確認し、公式練習を終えた。他陣営も4号車のタイムを更新することは出来ず、公式練習を『P1』で終えることとなった。
そのまま片岡選手が担当したFCY(フルコースイエロー)テスト枠を経て、ひさびさに実施されたサーキットサファリ。複数の大型観光バスが観客を乗せてサーキットを走行し、それをGTカーが縫うように走り回る、SUPER GTならではの催し物だ。ピットからはメカニック達がバスに搭乗するファンに手を振り、またひとつコロナ禍以前の姿が戻った。そんな中でも片岡選手は1分37秒702で走行し、ここでもトップタイムを記録していた。
続いて開催されたピットウォークではサイン会やチームから観客への配布物などは未だ禁止されたままだが、大勢の観客がピットロードやメインストレートを自由に歩き回って楽しんでいた。
そして午後3時、予選Q1開始。4号車はQ1A組でアタックする。路面温度は28度と午前よりわずかに上昇したものの、相変わらず8月とは思えぬ低温コンディション。Q1担当の片岡選手は、慎重にタイヤのウォームアップを進めグリップの発動を待ち、4周目に最初のアタックを開始、1分36秒407を記録して首位に立つ。直後に10号車(TANAX GAINER GT-R)が1分36秒159を記録しトップに躍り出ると、片岡選手も連続でアタックを続け、1分36秒299とタイム更新。ポジションは2番手に留まるものの、余裕で予選Q2進出を果たした。
午後3時35分、予選Q2開始。Q2担当の谷口は参加全16台の中ほどで走行していた。入念にウォームアップを済ませると、計測4周目で1分36秒161を記録して首位に立ち、ファンを沸かせる。しかしその直後、65号車(LEON PYRAMID AMG)と61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)が立て続けに1分35秒台中盤を記録して大差を付けられてしまう。谷口も連続アタックで前2台のタイムを追うが、36秒277、36秒437と好タイムながらもベスト更新には至らず、チェッカーフラッグを受けた。

正式結果を受け、翌日の決勝レースは2列目3番手からのスタートとなった。

【8月7日(日)】決勝

気温/路面温度 スタート前(13:50)26℃/33℃ 中盤(15:00)27℃/39℃ 終盤(16:00)27℃/33℃
ゴール(16:50)27℃/33℃
決勝日は朝からサーキット上空に夏らしい青空が広がり、レース観戦日和に。SUPER GT決勝日朝恒例のイベント、予選トップ3ドライバートークショーには片岡選手が出席して、トーク戦闘力の高さを活かしてグリッド前方のふたりにしっかり”プレッシャー”を掛ける。
サポートレース、ピットウォークを終え、午後12時30分から20分間のウォームアップ走行。決勝スタート担当の片岡選手は、燃料搭載量を含めた決勝向けセットアップで1分38~39秒台の安定したラップを刻んでいく。セッション終了間際に、ドライバー交代の練習も兼ねて谷口にシートを引き継ぎ、クラス4番手タイムで決勝への準備を整えた。

午後1時、スタート進行が始まって各車がグリッドに向かっているところで、突如サーキット上空に雨雲が立ち込め、大粒の雨が急速に路面を濡らす。ワイパー作動が必要なほどの雨ながら、4号車はスリックタイヤを装着していた為、スタート担当の片岡選手は慎重にグリッドへと向かった。
波乱の幕開けかと思わせた天候は、グリッドウォーク中にみるみる回復していき、レース開始直前には何事もなかったように穏やかな夏空が戻った。
午後2時、パレードラップスタート。静岡県警の白バイ隊と4台のパトカー先導にGTカーが続く。パレードラップの後、2周のフォーメーションラップを経て、決勝レースがスタートする。1コーナーへと雪崩れ込んでいった隊列内では、片岡選手が前を行く61号車を早くもロックオン。背後から迫る直線速度の高い国産GT3勢に対抗する意味でも、ライバルのタイヤ発動を待つ前に、まずは61号車のオーバーテイクが絶対命題となる。
片岡選手は数周にわたってスリップストリームからのブレーキング競争や、コース全域の動きを見極め、6周目の最終コーナーでラインを交錯させ華麗なオーバーテイクに成功。これで2番手とし、首位を行く65号車の追撃体制に入る。
しかし61号車とバトルをしていた間、1秒38秒前半で独走していた65号車とのギャップはこの時点ですでに7秒。片岡選手も1分38秒台と事前の想定どおり安定のペースを刻むが、65号車のペースがわずかに速くギャップはジリジリと広がっていく。
こうなれば戦略面で首位奪取をとチームが考えていた矢先の18周目、65号車の右フロントハブに異変が生じ、スロー走行でピットへ戻りそのままリタイヤとなってしまった。これによって4号車は期せずして首位に浮上する。
その後も安定したラップを刻んだ片岡選手は「ロングランも自信があったけれど、バックマーカーに引っ掛かったこと」や「やはり路温の上昇でタイヤのフィーリングも悪くなっていて」予定より4周ほど早く、26周目に最初のピット作業へ。
降りた直後にタイヤの表情を確認した片岡選手から「ペースを見ながらタイヤを守っていくことが必要」とのコメントと共にステアリングを引き継いだ谷口は、それでも1分39秒台のペースで徐々にポジションを回復。トラック上でも最速クラスで周回を重ねていく。
この後、優勝を争うライバルたちが次々と不運に見舞われる。38周目にはピットアウト後に優勝争いのライバルになると思われていた10号車がピットレーン作業時のトラブルで大幅にタイムロスすると、43周目には背後にいた55号車(ARTA NSX GT3)がマシントラブルでスローダウン、ピットに戻る。ピット戦略で奇策を採ったチームに前に出られることもなく、全車が1回目のピットインを済ませた45周目には4号車谷口が再びトップに。
55周目にはトラブル修復を終えてコースに戻っていた55号車にトラブルが再発し、ヘアピンからダンロップコーナー間の300Rでマシンを止めたことで、このレース初のFCYが発動する。ここも4号車には幸いしてSC導入には至らずに解除された為、2番手61号車とのタイム差は約25秒を維持したままレース再開となる。61周目に2度目のピットイン。再び片岡選手にドライバー交代し、タイヤ4輪交換、給油を行い暫定トップのままピットアウトする。GT300クラス想定フィニッシュ周回数の92周まで残り約30周、2位に大差を付けて独走状態、片岡選手はタイヤコントロール優先でマシンをゴールに運ぶ。全車がルーティン作業を終え、いよいよ順位が見た目通りに戻った76周目には2位の11号車(GAINER TANAX GT-R)とのギャップは約10秒に詰まっていたが、それも想定通り。第1スティント、第2スティント後のタイヤの状態と、時刻とともに下がり続ける路面温度から分析される状況からは、アクシデントにさえ遭わなければ5年ぶりの勝利が確実、誰もがそう確信した。しかし運命の77周目。「抑えたペースでもある程度、レースはコントロール出来ていたので。ブレーキングはかなり抑え目、抑え目でタイヤをプロテクトしていたんですけど……」と語った片岡選手の左フロントタイヤは、1コーナーでのブレーキングでペダル踏力を込めたと同時に「なんの予兆もなく」バースト。なんとかコントロールを保った片岡選手は、ダメージを最小限に留めながら1周を走り切りピットへと向かう。
チームはホイールハウス内やサスペンション周辺、ブレーキ周辺などのダメージ確認をしつつ、大事を取って4輪交換でコースへと送り返すと、片岡選手は14番手で集団に合流した。残り僅か14周、ファイナルラップでひとつポジションを上げ、最終的に13位でレースを終えた。
「予想以上の低温にどちらかと言うとライバル達が苦戦して、全体が落ちたところにメルセデスの位置が相対的に上がっただけでしたけれど、それでも今回は最大のチャンス。多分、この長いシーズン……じゃなくて、ここ数年の中でも最大のチャンスだったのに」との片岡選手の言葉どおり、約5年ぶりの勝利の美酒は、無情な形でのお預けとなってしまった。

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