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2024.06.29 SUPER GT

3戦鈴鹿でポイントを獲得するこができず【谷口信輝選手】

6月最初の週末、SUPER GTのシリーズ第3戦『SUZUKA GT 3Hours RACE』が開催された。
ゴールデンウィークに富士スピードウェイでおこなわれた第2戦に続いて、今大会も決勝レースは3時間の『時間レース』でおこなわれる。今大会の持ち込めるタイヤセット数は1台あたりドライタイヤ6セット(ウエットタイヤは7セット)となる。さらにレース中は2回の給油を伴うピット作業が義務付けられていた。
鈴鹿サーキットは、中高速コーナーが多いレイアウトでタイヤへの荷重負荷が高く、路面の攻撃性も高いためタイヤに厳しいことで知られる。さらにコース幅が狭くレース中のオーバーテイクがしにくい為、公式練習でいち早く最適なセットアップを見出し、今季より導入の"タイム合算方式"の予選フォーマットを攻略して上位グリッドを獲得し、できるだけ前からスタートすることが勝利への近道となる。
今大会のMercedes-AMG GT3に課されるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は、エアリストリクターが第2戦富士で採用された高速サーキット用のΦ35mmから、通常サーキット用の34.5mmに戻され、いつもどおりエンジン出力が絞られる。またBoP重量は前戦の35kgから40kgとわずかに重くなり、今季より安全性向上策として追加された重量39kgを加えて、総重量1364kgに達する。さらに戦績に応じて課されるサクセスウエイト(SW)は24kgを搭載するため、タイヤへの影響もより悪い方向へ出やすいと想定される。谷口信輝、片岡龍也両選手も「厳しい戦いになる」との覚悟でレースウイークに臨んだ。
6月1日(土)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ コース:ドライ
気温/路面温度:Q1開始時26℃/45℃ Q2開始時25℃/43℃ Q2終了時25℃/40℃
前日の雨は上がり朝から快晴の空が広がった。公式練習の始まる午前9時45分時点で、気温25℃、路面温度34℃、夏日になりそうな気配がサーキットを覆っていた。そんなコンディションの中、コースオープンとともに4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは片岡選手のドライブで走り出した。
GT500のマシンを中心に序盤は路面のラバーインを待ってピットで待機するマシンが多い中、片岡選手は精力的に走行を重ねた。計測4周目に2分00秒535、続くラップでは2分00秒485と刻むが、この後も2分を切れないままこれが公式練習の最終的なベストタイムとなった。
タイムは上位に遠く及ばず万全とはいかない状況ながら、持ち込みの状態で「クルマのバランスは悪くない」と判断した片岡選手は、早々にクルマを降り、残るセッションを谷口に託した。
谷口はそのまま混走時間帯をロングランのペース確認に費やし、2分03秒台を軸に安定したタイムを刻み続けた。クラス専有走行の10分間で自身のベストとなる2分00秒539を記録。ふたりで合計31周を走り18番手で終えた。
このセッションではトップ10圏内にヨコハマタイヤユーザーが1台も入らない事態となり、チームは思うようにならないタイヤの振る舞いに悩まされた。

その後おこなわれたFCY(フルコースイエロー)テストと、GSRバスも走行したサーキットサファリでは片岡選手が乗り込み、FCYでは7周、サファリでは6周を走り、セッティングを詰め、午後の予選に備えた。
今季の予選は、Q1をチームランキング順に分けられた2組で走り、それぞれの組の上位8台を”アッパー16”、それ以外の”ロワー17”に分けなおし、Q2がおこなわれる。そのうえでQ1、Q2のタイムを合算して予選の順位が決められる。昨季までの予選ではQ1はタイムに関わらず、上位8台に入りQ2へ進出することが目的だったが、今シーズンからのルールでは両ドライバーの合計タイムで順位が決まることから、Q1でも少しでも速いタイムを残すことが重要となっている。
ところで、路面コンディションはマシンが走るたびにラバーが乗ってグリップが良くなる、いわゆる”トラックエボリューション”が起きる為、Q1は後攻が大幅に有利となるが、どちらの組が先攻かは前戦の優勝ドライバーが引くくじによって決められる為。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、開幕戦、第2戦と幸運にも後攻で走行したが、今大会で振り分けられたB組は不運にも先攻で走ることになっていた。
Q1のアタックドライバーは片岡選手が担当。セッション開始と共に13台中6台がコースに向かうが、先攻の不利が少しでも解消されるようコースにラバーが乗った状態になるのを待つため、ウォームアップの時間を考慮したうえで1分ほどピットで待機した。公式練習で上位チームに追いつけなかった事もあり、Q1終了ギリギリにタイムアタックを行う計画でピットを離れるタイミングを測った。同様に考えたであろうライバル数台もピットで待機しており、 4号車よりもあとにピットを離れるマシンすら見られた。
片岡選手は計測4周目のアタックラップで2分00秒014を記録し6番手。このあと777号車、50号車が上回り8番手に後退するものの、Q1後攻組が終了した結果、4号車はQ2”Upper16”に入ることができた。
Q2"Lower17"のセッションを経て午後4時11分、Q2”Upper16"セッションが始まった。

今シーズンからのルールでは、予選はQ1、Q2を通して1セットのタイヤでアタックをしなければならない為、谷口はQ1を走り終えたユーズドタイヤを履いたままセッション開始と共にコースへと向かった。タイヤを丁寧に温め直し、グリップの再発動を促すと、自身4周目に2分00秒379を記録、続く連続アタックで2分00秒107までタイムを詰めた。しかしトップ車両は1分58秒台、それ以外の上位チームも軒並み2分を切っている為、このタイムでもセッション12番手が精一杯。合算では4分00秒121となり、”Upper16”の13番手となった。
新ルールでは、GT300クラスの予選は”Upper16”の下位4台と、”Lower17”上位4台は合算タイム順に並べ替えられる事になっており、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは今回の予選で『昇格・降格』対象となってしまった。この結果、4号車の最終順位は16位となり、翌日の決勝レースは16番グリッドからのスタートとなった。


6月2日(日)【決勝】
天候:曇り コース:ドライ
気温/路面温度:スタート時(13:30)25℃/34℃ 序盤(14:00)24℃/34℃ 中盤(15:00)24℃/31℃
終盤(16:00)22℃/29℃ ゴール時(16:30)22℃/29℃
日曜は朝から曇り空で、天気予報は降水確率50%と出ており、午後には確実に雨が降ると思われていた。予報通り、午前のピットウォークが終わる頃には小雨が降り出し、すぐに路面は完全に濡れてしまった。
正午からのウォームアップ走行はウェット宣言が出され、各車この週末初めてウエットタイヤを装着してコースインとなった。4号車のステアリングを握った片岡選手は、ピットを離れると、持ち込んだウエットタイヤのスクラブ(皮剥き/慣らし)をする為に、アウト/インを繰り返しウェットレースに備えた。
しかし、セッションの途中で雨は上がり、レコードラインから路面は乾いていった為、各チームともセッション終盤にスリックタイヤに履き替え、マシンの最終チェックをおこなった。
20分間のセッションを終え、グリッドへマシンを運ぶ頃には日差しが戻り、路面はほとんどドライアップしていた。
13時30分、三重県警の白バイ7台、パトロールカー4台が先導するパレードラップが始まった。さらにセーフティーカー先導のフォーメーションラップを経て、3時間の決勝レースがスタートした。16番グリッドから発進した4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのスタートドライバーは片岡選手、ドライコンディション用のスリックタイヤを装着してオープニングラップの1コーナーへ突入した。
その1コーナーの突入で、3台前方にいた65号車(LEON PYRAMID AMG)はポジションを2つ落とし、3台後方スタートだった50号車(ANEST IWATA Racing RC F GT3)は2つポジションを上げ、4号車は16番手と変わらぬまま、前後の対戦相手が入れ替わった。
レース序盤では、4号車の周囲はこの位置関係のまま進行した。片岡選手はその隊列内で2分03秒台のペースで集会を重ねてオーバーテイクのチャンスを待ち続けた。
そして11周目、前方で65号車、5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)、そして60号車(Syntium LMcorsa GR Supra GT)が三つ巴のバトルをする中で60号車が失速すると、片岡選手はその機を見逃さずパスして15番手に浮上した。さらに5号車もあわよくば……と狙い定めたが、シケイン飛び込みのブロックラインの攻防で5号車とサイドからコンタクトして失速、オーバーテイクには至らなかった。

片岡選手が5号車をオーバーテイクしたのは20周目で、この時点で13番手となっていた。ライバルたちは徐々に最初のルーティン作業に向かい始めていた為、続くラップで11番手、そして22周目に10番手と、ジリジリとポジションが上がっていく。ここから「何かしらのアクシデントにも反応できるように……というのも含めて(安藝貴範代表)」チームはステイアウトを決め、ライバルたちが次々とピットに向かう中、4号車はコース上で引っ張る作戦を採用した。30周目に7番手、31周目に5番手としたところで、チームは片岡選手にピットインの指示を出した。
ここで片岡選手は車を降り、チームは決勝3時間のうち残る3分の2を谷口の"ダブルスティント"とした。4号車はタイヤ4本交換と給油作業のフルサービスを受けてコースに向かった。
谷口は17番手でレースに復帰すると、2分03秒台ペースでラップを重ねた。「約2週間前の鈴鹿テスト(の感触)から『ちょっと勝負権はなさそうだな』って。そういう匂いは感じていました」との通り、上位陣のような速さは見せられなかったが、10秒以上前を行く62号車(HELM MOTORSPORTS GT-R)に徐々に近づいていった。
しかし、37周目にGT500クラス車両破損のデブリ回収の為にFCY(フルコースイエロー)が発生、さらに46周目に61号車SUBARU BRZ R&D SPORTがコースサイドに停車したことで2度目のFCYが発生と、たびたびペースを乱された。それでも、谷口は48周目にFCYが解除されるタイミングで4秒近くあった62号車とのギャップを詰め、 2.7秒差まで迫った。
56周目にはついに62号車のテールに張り付き、オーバーテイクのチャンスを伺うが、その時既にタイヤは限界に近い状態になっており、130Rでオーバーランしてしまう。結局62号車を自力で抜くことは叶わなかった。
チームは58周目に最後のルーティン作業を決断、谷口にピットインを指示する。メカニックチームは、マシンがピットに入ると速やかにコースオフによるダメージが無い事を確認、フルサービスを施して14番手でコースに戻した。谷口はフレッシュタイヤで61周目に2分01秒934、続く62周目にも2分01秒530と、立て続けに自己ベストタイムを更新する走りを見せた。
63周目に、2回目のピットに入らずに前を走行していた9号車(PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG)をオーバーテイク、65周目には5号車が2回目のピット作業へ向かい12番手へ浮上、さらに74周目にはペースの落ちた20号車(シェイドレーシング GR86 GT)を仕留め、トップ10目前の11番手に迫った。
しかしフィニッシュの3時間が目前の81周目、タイヤのグリップダウンと中間加速に劣るエンジン特性が重なり、最後のピット作業で逆転していた62号車に前方に出られ、そのままジリジリと離されていってしまった。84周目に12位でチェッカーを受け、GSRは3年連続で春に行われる第3戦鈴鹿でポイントを獲得することができなかった。

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