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2024.11.12 SUPER GT

SUPER GT 第7戦 AUTOPOLIS【谷口信輝】

台風10号の影響で第5戦鈴鹿サーキットが12月初旬へと延期され、今シーズンの最終戦になったことで、この第7戦『AUTOPOLIS GT 3Hours RACE』は今季6戦目のレースとなった。競技規則によりサクセスウエイト(SW)は年間参戦6戦目まではポイント×2kgとなる為、例年であれば7戦目に当たるここオートポリスでのレースはSWが半分になるのが通例だが、今大会ではシーズンで最もウエイトを搭載した状態でのレースとなった。オートポリスは舗装面の特性からタイヤへの攻撃性が高いため、SWがタイヤに与える影響が元々大きい。さらに今大会は第2戦、第3戦に続き3時間レースのフォーマットが採用され、昨季の450kmを超える長距離戦が想定されており、これでもかとばかりにタイヤマネジメントを難しくする要素に満ちたレースになっていた。そんな週末に臨むGOODSMILE RACING & TeamUKYO、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、Mercedes-AMG GT3の基本車両重量である1285kgに加えて、BoP重量が前戦より5kg増加の50kg。さらに今季から速度抑制策として搭載する追加重量が39kgで合計1374kgに達する。これに搭載上限の50kg(本来は56kg)に達したSWを加え、正真正銘のクラス最重量モデルとなり、走り出し前から厳しい条件が揃った。

10月19日(土)
金曜の搬入日は蒸し暑さの残る陽気で、各チームとも半袖姿でのピット設営が見受けられたが、土曜日には天候が一変し、阿蘇山周辺は雨と深い霧に包まれた。午前の公式練習は悪天候の為に開始予定時刻の午前9時20分から20分刻みで段階的にディレイが宣言されたが、結局午前10時30分には天候回復の見込み無しとの判断から、「午前中の走行はすべてキャンセル」の決定が下された。サポートレースやFCY(フルコースイエロー)テスト、さらにサーキットサファリの枠でもレーシングカーの走行がなくなったことで、九州を疾走する4号車グッドスマイル 初音ミク AMGの姿をバスに乗って堪能する計画だった"GSRバス"ことサーキットサファリバスは寂しいサーキット走行となってしまった。そこで当初予定のレーシングミクサポーターズに加えて片岡龍也選手、谷口信輝選手、安藝貴範代表、さらにはメカニックやチームスタッフも大挙してバスに乗り込み、両ドライバーのコースガイドとともに九州のファンとの交流のひとときを楽しんだ。午後12時15分からのピットウォークは、雨が止み曇り空のもとで始まったが13時頃から再び雨が落ちだし、雷鳴も聞こえだした。運営は落雷の危険が高いと判断、ピットウォークは当初の終了予定時刻よりも前倒しで終了となり、サーキットには建物の中に退避するよう勧告するアナウンスが響き渡った。その後も天候は全く回復せず、コース内外周を取り囲むように巡らされたサービスロードは水没し、ジェットコースターストレートなどでは目視できる河がコース上を流れ、グラベルの砂利がトラックへと流れ出てしまうコンディションとなった。この状況から、午後2時50分開始予定だった公式予選もキャンセルとなり、土曜は豪雨によるコンディション不良で結局1台もレーシングカーが走行することなくイベント終了となった。公式予選は明けた日曜午前8時よりまさに"一発勝負"となる30分間の計時予選でグリッドを決する非常ルールが適用されることになった。

10月20日(日)【公式予選、決勝】
天候:曇り コース:ドライ
気温/路面温度:スタート前(13:10)16℃/23℃ 序盤(14:20)15℃/22℃ 中盤(14:50)14℃/22℃
終盤(15:50)15℃/23℃ ゴール直前(16:20)14℃/22℃。

日曜朝の公式予選のコンディションは、雨はあがったものの走行予定時刻まで濃い霧が立ち込めていて、視界不良の上に路面はウェットコンディションとなっていた。チームやドライバーのみならず、パドックやスタンドにいた誰もが「走行可能なのか?」と心配する状況。しかしレースコントロールから定時の午前8時予選開始の判断が下ると、気温12度路面温度13度、路面はほぼウェットコンディションの中、走行が開始された。片岡選手は、車両バランスの確認はおろか持ち込みタイヤセットの確認も難しいような状況の中、まずはウエットタイヤを装着してコースへと向かった。クラス10台目のトラックインから1分52秒199と、この時点で2番手のタイムを記録し、すぐさまピットへと戻った。陣営によってはこのタイミングでドライ用のスリックタイヤを装着するところもあらわれていたが、GSRは異なるコンパウンドのウェットタイヤを選択、片岡選手は再びアタックへとむかった。そして、計測6周目に1分51秒165で同3番手とさらにタイムを伸ばした。路面はまだウエットパッチが残るダンプ路面ながら、ドライタイヤを装着しているマシンが次第に増え、セッション終盤にはスリックタイヤ勢によるアタックで大幅にタイムがあがることが予想された。ここでGSRもトラックコンディションの変化を受けスリックタイヤへの換装を決断。しかし、これが週末の運命を決める別れ道となった。「路面的にも、もうウエットでは厳しくなってきていたので、ここでスリックを履くんですが……前回のSUGOでの経験からも、ああいう路面でのスリックがかなり弱いことは分かってはいた」と語った片岡選手は、前戦を踏まえつつ、それでもアタックに向けた予選残り時間も考慮し、早めの熱入れを念頭にピットを後にした。「とにかく入りから温めていかないと時間的にも間に合わないし……というのでギリギリのところを行こうとしたら、まずいきなり1コーナーが曲がれない。それでさらにタイヤが冷えるという悪循環」に陥ると、残り8分半を前に予期せぬ事態に見舞われた。100Rでグリップを失った4号車はスピンからコースオフを喫し、フロントからガードレールに衝突。幸い、サスペンションやフレーム類までにはダメージが及ばず、バンパーや内部ダクト類の損傷に留まるクラッシュだったが、これでセッションは赤旗となってしまった。その原因となった当該車両はベストタイムが抹消されるルールなため、4号車の予選結果は計測2周目の1分52秒199のタイムが採用され、午後の決勝は24番手グリッドからのスタートという事態になってしまった。車両の損傷状況を確認したメカニックはピットウォークの間も懸命な修復作業を行い、午前11時30分開始の決勝前ウォームアップ走行までに修理は完了した。修復された4号車は暫定ステッカーと"安藝代表による片岡選手への請求書"も添付されたカーボン地のフロントバンパーが装着されていた。

ウォームアップ走行は公式練習が行われなかったために、通常の20分から40分へと拡大され、まずは片岡選手が修復したマシンのチェックと、決勝レースに向けたマシンバランスの確認を進めた。11周を走ったところでピットへと戻り、このレースウィークで初めて谷口選手へとスイッチ。最終的にドライで17周を走破し、ベストタイムは片岡選手の記録した1分47秒330の14番手タイムで、このあとの3時間に向け準備を整えた。午後1時20分の決勝スタート前、気温14度、路面温度21度、路面はドライコンデイション、肌寒さが感じられる中でパレード&フォーメーションラップがスタートした。スタート進行の時点で前方23番グリッドだった50号車(ANEST IWATA Racing RC F GT3)がマシントラブルによりピットスタートを選択。視界が開けたスタート担当の片岡選手は、オープニンググラップで30号車(apr GR86 GT)や360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)に先行し、21番手でホームストレートへ戻ってきた。さらに翌周には2号車がコースオフし一つポジションが上がったが、ジェットコースターストレートで11号車に抜かれ21番手のまま。5周を過ぎ、3時間フォーマットに義務付けられる2回の給油を消化しようとする車両があらわれ、19番手までポジションを上げた。14周を終えたところで最初のピット作業に向かい、ここで1回目の給油とタイヤ交換を済ませ、片岡選手の"ダブルスティント"でコース復帰していった。しかし10周を前後して前方に立ち塞がった18号車(UPGARAGE NSX GT3)も、続くラップで同様の戦略を採用。エンジンの吸気リストリクター径を34.5mm×2へと絞られているMercedes-AMG GT3では、ストレートが伸びるターボエンジン車両に対しオーバーテイクの決め手がなく、秒差圏内テール・トゥ・ノーズでの周回が続いていった。その渦中で18周目には1分48秒236の決勝ベストも記録したが、直後にGT500クラス車両のトラブル発生。このレース最初のFCYからセーフティカー(SC)が導入された。この時、GT300のトップ車両との位置が悪く、周回遅れとされてしまった。26周目のリスタート以降も18号車とのバトルが続くが、抜くには至らず。そして35周目にはふたたびGT500クラス車両のクラッシュでこの日2度目となるSCが発動。片岡選手は40周目のリスタートから狙いを定め、その2周後ついに18号車を仕留め17番手に浮上した。周囲のルーティン作業などもありポジションを13番手まで回復した4号車は、52周を終えたところで2回目の給油作業へ飛び込み、ここで谷口選手にステアリングを託した。谷口選手は17番手でコース復帰。序盤から常にポジション争いをしていた18号車も同じタイミングでピット作業をおこなったが抑えることにも成功した。57周目に谷口選手がセクター1ベストを記録し、さぁここから……と思ったのも束の間。GT500車両のクラッシュで3度目のSCが入り、わずか数周の熱入れでふたたびタイヤは冷えてしまうことに。64周目にリスタートし、ここから1分51秒台を軸にラップを重ねた4号車だったが、67周目の1コーナーで18号車に先攻されてしまい18番手に後退。77周目にはここまでルーティン作業を引っ張っていた360号車がピットに向かい17番手。そして午後4時26分のレース終了時刻まで残り時間15分に差し掛かりそうなところで、61号車が第2ヘアピンでマシントラブルによりクラッシュ。4度目となるSCがすぐさま導入された。そして、SCが解除されることなく3時間が経過。序盤のSCで喫した悔しいラップダウンも響き、16位で87周のチェッカーとなった。

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