SUPER GT 第7戦 MOTEGI【谷口信輝】
2024年SUPER GT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE』が本来なら今季最終戦として"GRAND FINAL"になるハズだったが、第5戦の延期により今季7戦目として開催された。例年のもてぎのレースは最終戦として開催されていた為に年間の戦績に応じて課されるサクセスウエイト(SW)が全て降ろされて、ノーウェイトで各車が性能をぶつけ合うガチンコレースをするのが恒例となっていた。しかし今年はシーズン7戦目での開催になった為、ドライバーポイント×1kgが搭載されることとなり、ストップ&ゴーが多くブレーキに厳しいもてぎのトラックでSWがどう影響するかが注目ポイントとなった。これも恒例となっているが、Mercedes-AMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)はここでも厳しく、BoP重量50kgと、速度抑制策として搭載する追加重量39kgを合わせて合計1374kgと、GT300クラス最重量の車両となった。4号車はこれに加えて28kgのSWを搭載して臨む。
11月2日(土)【公式練習、公式予選】
天候:雨 コース:ウェット
気温/路面温度GT300 Q1開始時 17℃/19℃ Q2終了時 18℃/19℃
予選日のコンディションは、第6戦SUGOや第7戦オートポリスに続き朝から雨模様となった。雨量はかなり多く、この週末も予選キャンセルや前戦のようなワンデイ開催への変更も予想されていた。ところが定刻の午前9時、大会運営サイドは走行可能との判断をくだし、公式練習走行が開始された。4号車もまずは片岡龍也選手のドライブでピットを後にしたが、雨量は決して少なくなく、このセッションは幾度もの赤旗
中断に見舞われることになる。まずは開始2分で25号車(HOPPY Schatz GR Supra GT)がコースオフしたことで赤旗が出された。午前9時8分にセッションが再開されると、今度は11号車(GAINER TANAX Z)や777号車(D'station Vantage GT3)が相次いでスピン、「トラック上の雨量増加」のため午前9時14分に2回目の赤旗が掲出され、長い中断に入る。午前9時40分、雨量が減ったことによりセッションは再開され、片岡選手が引き続きウエットタイヤの感触や車両バランスの確認を進めたが、その5分後には2号車(muta Racing GR86 GT)が最終コーナーでスピンして3回目の赤旗掲出。午前9時52分にセッション再開となるが、午前10時7分にはGT500クラス車両の38号車がスピンして4回目の赤旗が掲出される。車両が回収された後、午前10時22分にセッションは再開されたが、GT300クラス専有走行枠を前にして20号車(シェイドレーシング GR86 GT)がスピンした為、5回目の赤旗中断となった。度重なる中断でタイヤとセッティングの確認が思うように進まなかったが、クラス混走時間の最後に記録した2分01秒076のタイムで、この段階で8番手につけていた。
午前10時31分からGT300の専有走行が実施されたが、雨量が増えたために午前10時35分に6度目の赤旗が
掲出された。雨は収まらず、セッションはそのまま再開されることなく終了となった。さらにその後のGT500専有とFCYテストの走行枠もキャンセルされて、午前の走行は終了となり、わずか12周をしただけで午後の予選に挑むこととなった。予選は、本来第5戦鈴鹿よりQ1の組分けを無くした新方式が採用されるはずだったが、その第5戦は12月開催に変更、続く第6戦、第7戦は連続して悪天候により実施できず、今大会でようやく実施される事になった。新予選方式は、Q1とQ2のタイム合算は変わらないものの、Q1のチームランキングによる組み分けが廃止され、全27台のGT300車両が一斉にコースに出て20分間の計時予選をおこなう。そのQ1の結果から、上位14台のUpper14(U14)と下位15台によるLower15(L15)に分かれて、それぞれの組でQ2を走る。その上でQ1とQ2のタイムを合算した合計タイムで順位を争うのだが、今回のようなウェット宣言が出ている場合にはタイム合算は行わず、Q2タイムでグリッドが決するという内容だ。午後2時、気温17度、路面温度19度、天候は雨で湿度は98%、路面はヘビーウエットという条件のもとQ1が始まった。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのQ1アタックドライバーは片岡選手。午前中の公式練習を走り、もてぎが得意な片岡選手にQ1を託し、この難しいコンディションでも確実にQ2のU14に残る作戦だ。やはり多くのマシンがスピンやコースオフを喫する難しいコンディションだったが、片岡選手は計測3周目から2分05秒860、続くラップで2分03秒881とタイムを詰めていき、この段階でトップ10圏内の8番手に進出していった。雨量増加によって、午後2時12分に赤旗中断となったが、午後2時35分に残り時間10分で再開。厳しいコンディションのなか最後のアタックで2分01秒174まで自己ベストを更新。最終的に8番手でQ2のU14進出を決めた。GT500のQ1とGT300のQ2 L15を挟み、午後3時31分にQ2のU14が始まった。これが週末の初ドライブとなる谷口信輝がステアリングを握る。チームはこのあとコース上の水の量が増えると予想し、タイヤのウォームアップを優先して新品ではなく、Q1を走行しタイヤに熱が残ったウェットタイヤを選択した。隊列の8台目でコースへと向かい慎重な熱入れと路面状況の確認を済ませると、計測3周目で早くも2分フラット、続く4周目で1分59秒台に突入する1分59秒432を記録してみせた。さらに翌周のセクター1もベストを更新したものの、路面の水量は想定ほど多くはなく、敢えてチョイスした中古タイヤはピークを越えてしまっていた。谷口のラストアタックは1分59秒502とタイム更新には至らず最終的に12番手で予選を終えた。
11月3日(日)【決勝】
天候:晴れコース:ドライ
気温/路面温度スタート時(13:00)21℃/32℃ 序盤(13:30)21℃/33℃ 中盤(14:00)21℃/32℃
終盤(14:30)21℃/31℃ ゴール時(15:00)20℃/29℃
明けた日曜の決勝日は、前日の天気から一変、もてぎの上空には澄み切った秋の青空が広がった。前日の走行がすべてウェットコンディションだった為に、午前11時30分から設けられた20分間のウォームアップ走行はいつも以上に重要なセッションとなった。各チームとも、持ち込んだスリックタイヤのセットがどのような振る舞いを見せるのか見極めを済ませる最初で最後の機会とあって、全車が精力的に走っていた。セッション開始時点で気温21度、路面温度は29度。片岡選手はコースイン直後からこの時点で首位となる1分49秒560の好タイムを記録し、すぐにピットに戻ると異なるコンパウンドのタイヤに履き替えて評価を行った。片岡選手は続くタイヤセットでは1分51秒878を記録しつつ、車両のセットアップを含めてバランスの最終確認を終えた。このセッションで4号車は、当初に記録したタイムで7番手となり、午後の決勝300kmに向け一定の手応えを得た。本来なら、決勝を見据えた燃料搭載状態のレースペースを確認し、ロングランでのタイヤがどのように変化していくか(グリップダウンしていくか)のフィーリングも見たかったところだが、20分のセッションではそこまで見極めることができなかった。そこで決勝レースに向けては、早めのピット作業を想定し、燃費に厳しいコース特性や、スタートからのスティント序盤でのタイヤのデグラデーション(劣化、機能低下)、更にセーフティカーやFCY(フルコースイエロー)発動による混乱をに備える方針の作戦となった。栃木県警が誇る豪華スポーツカーをベースとした5台のパトカー先導のもと、定刻の午後1時にパレードラップがおこなわれ、続いて1周のフォーメーションラップを経て決勝300kmレースが幕を開けた。スタートドライバーはこのもてぎを得意とする「もて(ぎを得意とする片)おか」こと、片岡選手が担当。クラス最重量と不利な車両であってもオープニングラップの攻防に滅法強い片岡選手は、1コーナーから2コーナーに掛けて前方の52号車(Green Brave GR Supra GT)を仕留め、5コーナーで50号車(ANEST IWATA Racing RC F GT3)も追い抜き、早くもトップ10圏内に進出。さらにV字コーナーで777号車に並ぶが、惜しくも抜くには至らなかった。しかし、4周目には17番グリッドからからジャンプアップしてきた88号車(VENTENY Lamborghini GT3)にオーバーテイクを許し、5周目にはタイヤ無交換狙いだと思われる温まりの悪いブリヂストン(BS)タイヤのウォームアップが完了した52号車にも先行されてしまい、スタートポジションの12番手へ戻ってしまった。6周目、11号車がマシントラブルにより、ピット出口脇のコースサイドにマシンを止め、最初のFCYが発動。7周目にリスタートするが、8周目には25号車がタイヤ脱落からS字コーナーでグラベルにスタックし、2度目のFCYとなった。このFCY解除時に、レーシングスピードへ復帰する際、片岡選手は前方の52号車をバックストレートでふたたび差し返した。
12周目、52号車にV字コーナーでまたもや抜き返されてしまうが、ポジションを下げてきた45号(PONOS FERRARI 296)をヘアピンでオーバーテイクし、11番手とした。20周を迎えピットウインドウが開くとライバル達が一斉に作業へ飛び込む可能性を考慮し、混雑や渋滞を避け24周目でルーティンの作業へ。ここで給油とタイヤ交換を済ませ、谷口にドライバー交代をして残り3分の2の距離を託した。谷口駆る4号車は13番手でレースに戻ると、まずはタイヤ無交換作戦で浮上してきた2号車(muta Racing GR86 GT)を追った。性能に優れるBSタイヤ装着の2号車だが、タイヤを変えている谷口の方がペースがよく、すぐにテール・トゥ・ノーズになりオーバーテイクを伺うが、一気に抜き去るまでの決め手が無く、このまま前方を塞がれる格好になってしまった。数周の攻防を経て、谷口は39周目に2号車を仕留めたが、同時に背後には56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)が迫ってきていた。56号車も2号車を抜くと、そのまま谷口へと迫り今度は防戦側でテール・トゥ・ノーズとなった。41周目に61号車のブレーキ故障によるコースアウトが発生しFCYが発動、その解除後も56号車の猛プッシュに耐えていた谷口だが、47周目についに先行を許してしまい、4号車はポイント圏外の11番手に落ちてしまう。しかし最終盤にGT500車両のバトルに巻き込まれてダメージを負ってしまった31号車(apr LC500h GT)をパスしたことで、51周目にトップ10のポジションを回復。チェッカーまで1分52~53秒台のペースも維持し、からくも入賞圏内の1点を追加する58周のフィニッシュとなった。